耳鼻咽喉科、アレルギー科

名古屋市千種区日和町1-1-4

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かぜかなと思ったら

風邪かなと思ったら何科を受診すればいいですか?

体調がいつもと違い、風邪かなと思うことがあると思います。そんなとき、「風邪かもしれないから内科に行こうかな」「喉が痛いから耳鼻科に受診しようかな」と思うことがあると思います。また時には、「何科に受診すればいいのだろう?」と迷うことはありませんか。基本的には風邪かなと思ったら、耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。その理由については下記にて説明いたします。

風邪とは

皆さんがよく「かぜをひいた。」と表現されるのは、ウイルスや細菌などの病原体が上気道(鼻やのど)に感染して起きる急性炎症による鼻水、鼻づまり、のどの痛み、発熱、頭痛、体のだるさ、咳、痰(たん)などの一連の症状のことで、医学的には「かぜ症候群」「感冒(かんぼう)」といい、炎症が起きている場所から「急性鼻咽頭(びいんとう)炎」「急性上気道炎」ともいいます。
かぜ症候群の原因の80〜90%がウイルス(細菌よるのはまれ)で、そのウイルスの数はなんと200以上も存在すると言われており、頻度が高いのがライノウイルス、他には、コロナウイルス、 RSウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス(:よく知られているインフルエンザとは別のウイルス)などがあります。
症状の出方には個人差がありますが、かぜ症候群は通常発症後3日をピークとして、7〜10日間で自己免疫により改善します。インフルエンザや新型コロナウイルスに対してはウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬がありますが、かぜ症候群のウイルスには特効薬(抗ウイルス薬)はなく、鼻やのどの炎症を和らげる「抗炎症剤」、痛みや熱の時に使用する「解熱鎮痛剤」、咳がひどいときの「咳止め」、大量の鼻水で困るときの「鼻水止め(抗ヒスタミン剤)」、痰を和らげる「去痰剤」、のどの痛みや違和感を和らげる「うがい薬・トローチ」など、症状に応じた対症療法が治療の主体で、細菌を退治する抗菌薬(抗生物質)はウイルスには効果がありません。

風邪とよく似た病気

風邪と症状がよく似ている病気についてご紹介いたします。
一般的にかぜ症候群と同様な症状が起きますが、これとは区別した病名で扱われる感染症として、皆さんがよくご存じなのが、大流行したり重い症状をきたす「インフルエンザ」や「新型コロナウイルス(COVID-19)」です。(通常体内でウイルスが増えてくると熱を出してウイルスをやっつけようと体が反応します。発熱した=ウイルスが増えた状況になったらインフルエンザやコロナウイルスの検査で判定がしやすくなります。初期のウイルスが増えていない段階では発熱がない場合もあり、かぜとの見分けがつきにくく、ウイルスが増えていない=発熱していない段階での検査では陰性と出てしまったり、発熱の1日目の検査で陰性であっても発熱が続いた翌日ウイルスが増えてから再検査を行うと陽性と判定されることもあります。)
そのほか、激しく咳き込み、乳幼児で呼吸困難をきたすことがある「RSウイルス」、のどの奥が腫れて“ケンケン”という咳を特徴とし、呼吸困難・窒息死をきたすことがあるパラインフルエンザウイルスなどによる「仮性クループ:急性声門下喉頭(こうとう)炎」などにも注意が必要です。
声がれが顕著な場合には、声をだす場所:喉頭(こうとう)の声帯(せいたい)の炎症「喉頭炎・声帯炎」。のどの痛み・38℃以上の発熱・目の充血をきたすアデノウイルスによる咽頭結膜熱(プールで感染することもあり、プール熱ともいう)などもあります。これらもかぜ症候群と同様に、ウイルスに対する特効薬がなく、対症療法が治療の主体です。

1週間以上症状が改善せず続くときや、症状が一旦軽くなってきていたのに再度悪化したときには、ウイルスによるものから細菌感染に移行しているかもしれないと考えた方がよい場合があります。また、数日以内でも、色付きの鼻水や痰がでたりする場合には、細菌感染の病気、「急性副鼻腔(ふくびくう)炎」、「急性気管支炎」、「急性扁桃(へんとう)炎」などが起こっていることもしばしばあります。

※近年では、海外の大気汚染に伴うPM2.5や黄砂も風邪と同じような症状をきたすことがあると考えられています。

【副鼻腔(ふくびくう)炎】
色付きのねばついた鼻水・鼻づまりがひどいときは「副鼻腔炎」を疑います。副鼻腔炎とは細菌感染によって鼻の周囲にある骨に囲まれた空洞:副鼻腔に炎症が起こる病気です。副鼻腔は鼻の奥あたりから頬や目、歯付近に位置するため、鼻の横あたりが痛みを伴う場合も副鼻腔炎の症状の可能性があります。急性副鼻腔炎を適切に治療しないと、耳が痛くなる急性中耳炎の原因となることがあります。また、ごくまれに視神経に炎症がおよんで目が見えなくなったり、脳に炎症がおよんで髄膜炎を引き起し意識障害が生じる可能性があります。できるだけ早めに治療することが大切です。

【急性扁桃(へんとう)炎・扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍(のうよう)】
高熱・飲み込みができない程ののどの強い痛みが起きる「急性扁桃炎」やその周囲に炎症が及んだ「扁桃周囲炎」など点滴入院が必要となることもあります。
また、扁桃の周囲に膿がたまって腫れ上がる「扁桃周囲膿瘍」、さらに深部に感染が広がると太い血管が存在する首の深部に膿がたまる「深頸部(しんけいぶ)膿瘍」、さらには心臓が存在する縦隔(じゅうかく)に感染が及んで膿がたまる「縦隔膿瘍」など、生命の危険が生じることがあります。

【急性喉頭(こうとう)炎・急性喉頭蓋(こうとうがい)炎】
のどの奥の喉頭には発声に重要な声帯があり、炎症が及んだ「喉頭炎・声帯炎」になると、声ががれる症状が出ます。また、喉頭に付いている板:蓋(ふた)という漢字が使われる喉頭蓋(こうとうがい)が炎症を起こしてピンポン玉のように腫れあがってしまう「急性喉頭蓋炎」になると、呼吸困難・窒息が起き、最初はのどの痛みだったけど最終的に生命の危険が生じることもあります。

耳鼻咽喉科では、鼻の奥やのどの奥を観察する内視鏡検査を行いこのような重要な病気を的確に診断して治療しています。
これらの病気は鼻の奥やのどの奥、声帯までを確認して診断および治療となるため、耳鼻咽喉科での受診をおすすめする理由の一つになります。

【急性気管支炎や肺炎】
通常、ウイルスや細菌が侵入してくると、最初に体につくのが鼻やのどの粘膜であり、鼻水・咳・痰でそれらを追い出そうとする反応がでます。副鼻腔炎では鼻水がのどにたれる後鼻漏(こうびろう)によって、のどの痰のからみや咳になることもあります。また、内視鏡で鼻の奥を観察して実際に後鼻漏があるのに、症状として全く感じない患者さんもいらっしゃいます。痰や咳が主な症状でも、急性副鼻腔炎の可能性がありますので、まずは耳鼻咽喉科を受診した方がよいかなと思います。炎症を起こしている場所が変わってくると、声を出す喉頭の声帯などに炎症が及んで、声がかれたりします。ここまでは耳鼻咽喉科で対応していますが、さらに奥に炎症が及んで痰や咳がとてもひどい状況の時には「急性気管支炎」や「肺炎」が起こっていないか、当院では胸の音を聞く聴診も行っていますが、念のため呼吸器内科や小児科にも受診するのがよいと思います。また、感冒症状で耳鼻咽喉科を受診して、鼻や副鼻腔に問題がなく急性気管支炎や肺炎などが疑われる時にも、呼吸器内科や小児科を受診するようお勧めしています。

このような場合はご相談ください

内科や小児科の先生は、口蓋垂(こうがいすい=のどちんこ)や扁桃までは見られると思いますが、鼻の中や奥、のどの奥や声帯まで見る事はほとんどないのではないでしょうか。内科や小児科で急性扁桃炎を治せることがあると思いますが。急性副鼻腔炎、扁桃周囲膿瘍、深頸部膿瘍、急性喉頭蓋炎は、耳鼻咽喉科でなければ診断および治療は難しいです。風邪と思って病院を受診しても、ウイルス性の感冒よりも重篤な病気が起こっていて、命を脅かすかもしれないですね。その感冒よりも重篤な病気を的確に診断し治療できるのが耳鼻咽喉科です。

耳鼻科では鼻の中やのどの奥はもちろん、声をだす場所:喉頭・声帯の状態なども確認し診断・治療を行っています。風邪は一旦重症化してしまうと、重篤な病気を合併してしまうこともあるため、重症化する前に治療することが大切です。風邪かなと思ったときは、なるべく耳鼻科に相談することをおすすめします。

※感染症の状況は時間と共に変化します。診察時に問題がなくても、後になって悪化して重篤な状況になることもあります。急変時には救急車の要請、救急病院への搬送などが必要です。